eSATA-Roadtest 2006

レポート:設置/インストール

 

お待たせいたしました。
設置/インストールのレポートです。
※06.10.19追記あり




田巻 源太/エアフレイム


■雑感
すでに3ヵ月ほど連続で業務で使用していますが、かなりのスピードと安定性ですね。
弊社では、PVやVP、番組などの制作、編集を主に行っておりますが、メインではXserveRAIDを使用しています。体感的に7TB(RAID 50)の現行世代のXserveRAIDと比較しても遜色ないですね。場合によっては若干速いかもとおもうこともしばしば。
業務全般の中でSD,HDの比率ですが、最近はSD:HDで7:3程度でしょうか。

HDのみをぶんぶん回す、という状況ではありませんが、徐々に非圧縮HDも圧縮HDも増えてきていますね。毎日の作業の中で、XserveRAID並のスピードと安定性があるというのは、かなり大きなことだとは思いますが、なにより、ほぼ24時間電源入れっぱなしで使い続けていく状況で何も問題が起きないのは驚きです。

筐体のサイズや、一般用のSATAディスクを使用するというところで、かなりの不安は有ったのですが、これといったトラブルもなく作業が出来ている、XserveRAIDと同様の使用感で作業が出来ているということが実は一番大きな収穫かもしれません。

■設置導入
さて、少し以前の記憶を掘り起こすことになりますが、設置に関してのレポートです。エンクロージャー自体のサイズがかなり小さいこともあり、HDDを入れていない状態で机に配置しましたので、XserveRAIDの様に腰を痛める、もしくは二人掛かりでないと出来ない、といったことはありませんでしたね。

2台のエンクロージャーで8台のHDDを収納する仕様ですので、今回は縦に2台エンクロージャーを並べてみました。添付していただいたInfinibandのケーブルが長さ2mとのことでしたので、机の下に配置してあるPowerMacG5へのケーブルの取り回しには問題無し。別途ラック等に収納されている場合少し困るかもしれませんね。

エンクロージャーへのHDDの取り付けは、むき身のSATA-HDDに1台ずつマウンタをドライバでネジ留め。そして1台ずつ差し込んでいく。至って単純で簡単な作業です、特に問題はないかと思います。

設置も終わり、次はカード自体のインストール。
カードの取り付けは、通常のPCI-Express使用のカードですので空いているポートへ刺せば問題ないでしょう。

ドライバ自体は、カードのメーカーがかなり不思議な日本語ですが、日本語版サイトを用意していますので、そこから最新のドライバをダウンロード(2006/10時点でMacPro対応版も出ています、通常使用に問題は感じませんでした)。

そしてインストール。

ここまでは実にスムーズ。そして再起動。
システムプロフィールでも無事カードを認識しています。

この状態で、一度電源を切り、エンクロージャーからのびるInfinibandのケーブルを2本刺して起動。まだこの状態ではRAIDは使用不可(当然ですが)

DSC_0099

そして、次にRAIDカードの設定とRAIDの初期化です。
このカードの特徴でもあるのですが、ブラウザ上から行います。
これが問題。後に別場所で再度設置作業を行う時にも同じ問題に遭遇するのですが・・・。

ブラウザからRAIDカードの設定をする、「そのアドレスが分からない」。
これは大問題かと、現状の添付資料がどうなっているかは分からないのですが、添付のPDFを数ファイル探しまわり、ようやく発見いたしました。

その後の設定は基本的にマニュアル通りです。

まずはHDDの1台ずつをイニシャライズ(?)して使用可能な状態にし、そこから必要なRAIDセットを選択してRAID構築。ビデオ編集の場合はRAID5で問題ないかと思います。


※図はテストのためRAID 0の設定

RAID構築にかかる時間は、搭載するHDDの容量によっても変わってきますが、今回の場合は250GBを8台用意して、1.75TBのRAID5、でほぼ3時間程度かかりました。ちなみに後日、MacProにて500GBを8台用意して3.5TBで構築した際にはちょうど倍の6時間程度かかりました。

構築が完了した後、ディスクユーティリティでマウント。

これにて作業は完了です。
RAIDの設定画面のアドレスが分かりづらかった以外は、非常にスムーズに設定できました。
設定画面自体が英語なので取っ付きにくい感はありますね。アドレスの記載を含め、日本語マニュアルのつくりはかなり疑問を感じますけれども。。。

現在MAXSERVE社(および同社卸のショップ)で購入されたユーザーの方にオリジナルの日本語簡易マニュアルを提供しています。詳しくはMAXSERVE社にお問い合わせください。(2006.10.19)

基礎:テスト環境とストレージ

ロードテストで使用する環境と、プロダクションにおけるストレージについて




田巻 源太/エアフレイム


■ロードテスト環境

弊社の映像制作部では、実写、モーショングラフィックスに用途別にApple Final Cut Proを中心とした3チェーンのNLE環境を構築しています。

NLE:
HD用、PowerMac G5 2.5GHz Quad 4GBRAM/AJA KONA LHe/XserveRAID 7TB(RAID50)
SD用、PowerMac G5 2.5GHz Dual 4GBRAM/BMD DeckLinkSP/XserveRAID 2.5TB(RAID50)
サブ用、PowerMac G5 2.0GHz Dual 2.5GBRAM/G-RAID 500GB

VTR:
HDW-M2000(HDCAM),BVW-75(BETACAM),DSR-11(DVCAM)
ソフト:Apple Final Cut Studio 5.1,Adobe AfterEffects6.5 Professional,Adobe Photosop CS2,IllustratorCS2などなど。

今回のロードテストでは、HD用に使用している、PowerMac G5 QuadにSATA-RAIDを構築して、最新のXserveRAIDとの比較を含め検証しようと思っています。

■映像制作プロダクションにおいてのストレージ環境に関して

まず最初におことわりしておかなければなりませんが、弊社では、様々な映像コンテンツを扱います。非圧縮HDから、携帯電話向けの映像までも。従来のポストプロダクションでのVTR中心の映像制作ではありません。弊社での事例がすべての映像制作プロダクションに置けるストレージへの現状、というわけではありません。
しかし、今回のSATA-RAIDの性質を考えるに、VTRはIN-OUTだけ(INだけというのも増えてきましたね)PCに取り込んだ映像をNLEにて編集、というスタイルの小規模プロダクションは今後着実に増加していくと思われます。
そして、昨今の急速なFinalCutProの業界への浸透を鑑み、弊社でのロードテストが参考になるケースも増加していくのではないかな、と思っております。

さて、NLEで必要となるストレージとはどのようなものでしょうか。
扱われるフォーマットによってもかなり違いますし、編集する映像の内容によってもかなり違います。
ですが、標準的に考えてスピード、容量、安定性、そして価格、この4つかなと思われます。

まず、スピード。
これは扱うフォーマットで相当違いますね。DVのみであれば、25Mbpsを数本リアルタイムで走れば十分。Mac内蔵のSATAや外付けのFireWire400やUSB2.0のHDDで十分ですね。RAIDも必要ないかもしれません。非圧縮のSDになりますと約200Mbps、FireWire800のRAID(LaCieやG-RAID)が必要になりますね。弊社でも最近増えて来た非圧縮HDですと、1.5Gbps。さすがにファイバーチャネルやSCSIなどなどMacに標準でついていない規格のインターフェースじゃないと厳しいですね。

次に容量。
これは、もう有るにこしたことはないですね。たくさんすぎて困ることなんてないでしょうね(物理的なサイズは別にして)非圧縮HDですと、1時間で500GB近く消費しますので。
特に最近は非圧縮HDな案件が並行して行われることも増えてきました。
1案件で素材、完パケとも含め、ワークスペースとして2〜3TB必要、しかも同時に3案件、なんていうこともあります。
レギュラーの放送番組を抱えているプロダクションはもっと必要でしょうね。

そして、安定性。
どんなにスピードが速いストレージだとしても、そのスピードが恒常的に保証されているもの、となると実は少なかったりします。しかも、必要とされる安定性は2種類。
非圧縮HDで素材を取り込む場合、1.5Gbps以上のスピードが安定して60分なり90分出てくれないと困る。ということ面での安定性。
そして、1つの案件を編集するにあたり、数日から場合によっては数ヶ月の期間、常に1.5Gbps以上のスピードが出るという面での安定性。
そして、同時に記録されているデータ自身をきっちり保持してくれること。

価格に関しては、安ければ安いだけいいことはお分かりと思いますが、プロダクションの規模によっては、XserveRAIDなら安いからOK。という場合や、XserveRAIDなんて高くてNGなんて場合もあります。

以上を踏まえて、今回のSATAでの外付けのRAIDを構築するというケースのメリット、デメリットを考えてみますと。
スピードの面ではXserveRAID以上のスピードがでるようですので問題無し。容量的には最大で約5TB、価格もHDDなしで10万円弱+必要な分だけの市販のバルクHDDの値段。最大につんでもXserveRAIDよりは安いですね。この2点は今のところメリットと考えられます。
(注:SANを組んだ場合のスピードのことは考えに入れておりません)

安定性に関しては、今後の検証次第なので未定。

ただ、プロダクションの規模によっては、複数のコンピュータから(PC含め)同じデータを参照したい、という場合が出てくるものです。
そういった場合には、今回の外付けのSATA-RAIDでは対応できませんので、ここは最大のデメリットでしょうか。(LAN上のマシンのHDDを読みにいく、というNAS的な使い方であれば可能ですが、スピードを考えますと、1000BASE-TでのLANでもDVが実用的に使える位ですので)

以上が、ロードテスト環境のご紹介、テスト前に把握しておきたいメリット、デメリットでしょうか。
さて、それでは、今後実際のロードテストに移っていきたいと思います。

実際、使用を初めてみて思わぬメリットが既に見つかっているのですが、それが「音」
XserveRAIDを使っている方は分かるかと思いますが、ファンの音が結構するんです。大型のFCやSCISのRAID全般に言えることですが、結構な音がします。
今回使用しているエンクロージャNA-750Aの特徴かと思われますが、ディスプレイの横という設置場所に関わらず、ほとんど邪魔になることなく作業が出来ております。
SOHO的な環境が多い小規模プロダクションにとって、これはかなり大きなファクターになるかな、と思われます。

基礎:RAIDについて

RAIDの仕組みと必要性を通して、今回のテスト構成のポイントを解説します。


maxserve

和田 健哉/MAXSERVE


■なぜRAIDを組む必要があるのか
『なぜRAIDを組む必要があるのか』まずそこから考えてみます。
ハードディスク(HDD)の転送速度はATAディスクの場合、現状でも60〜80MB/s。高速なSCSIディスクでさえ100MB/s前後です。

翻って現在の映像編集に必要な速度を考えてみましょう。扱う種類に依って人それぞれだとは思いますが近頃の10bit非圧縮HDなどになると200MB/s以上は必要になってきます。しかしHDD単発でこの速度は現状では物理的に絶対不可能です。

そこでRAIDを組む必要が出てくる訳ですが、元々RAIDはその単語の元が「Redundant Arrays of Inexpensive Disks(安価なディスクを束ねて冗長化させる)」である様に単発のHDDでは万一クラッシュした場合などにデータの復旧が難しい為に考え出された技術です。

RAIDを使用することによってデータを複数のHDDに分割して書き込むことになり、リード・ライトの速度が上がるという効果も得られるよ うになりました。また最近の映像のハイビジョン化に伴うデータ量の増大にも複数のHDDで1つの大容量アレイを作成出来るメリットを持つRAIDのテクノロジーは必須になっています。

■RAIDをどこで組むべきか
RAIDを組む場合2つの方法があります。それは外部で組むか内部で組むか、です。

外部で組むというのはいわゆるRAIDコントローラを外部筐体内に積むタイプの物で、例に挙げるとAppleのXserveRAIDがこのタイプです。内部で組む場合はPCケース内にHDDを多数詰め込みPCの拡張スロットにRAIDカードを刺したそこにHDDを接続します。

外部筐体のRAIDコントローラ内蔵タイプは現在出ている製品の接続形式は、その殆どがUltra320SCSIかFibreChannelです。従って必然的にどんな台数でアレイを組んでも接続形式によって転送速度が制限されることになります。(下図参照)

先述の通り映像編集で今必要になってきている転送速度は200MB/s以上を必要としてきています。

ど んなに筐体側でアレイを組み転送速度を絞り出してもインターフェースがボトルネックになる可能性があるわけです。そのためSCSIや FibreChannelではRAIDアレイを2つ組みDualチャンネルとしてホストPCに接続し、帯域を見かけ上大きくする仕組みを取る構成が増えています。

データの流れを水道の水と例えると、その水を流す管(水道管)の太さがインターフェースの帯域幅です。水道管のキャパシティ以上に水を流すことは出来ません。ならばということで水道管を2つ並べて流すというイメージです。

これと比較して内部で組んだ場合、基本的に接続インターフェースがボトルネックになる可能性はほぼ有りません。(あるとすればRAIDカードを刺したバス部分)
なぜならHDDのデータがダイレクトでRAIDコントローラへ流れるからです。

しかし、内部で組む場合には大きな欠点があります。それは筐体内にHDDを多数積むことが出来ない、ということです。WindowsPCですと大きな筐体を 持ったPCも作成することが出来ますが、ことPowerMacG5等になると筐体内にHDDを数台も搭載することは不可能です。

そこで出てくるのが、今回ロードテストをおこなうにあたって採用した技術である『マルチレーン』です。

 

マルチレーン Fibre Channel SCSI(パラレル)
伝送帯域幅 10Gbps(1GB/s)
(※ 4レーンの場合)
2Gbps(200MB/s)
4Gbps(400MB/s)
320MB/s
ケーブル長 2m 15m 12m
接続台数 HBA*に依る 127 15
コスト
接続形式比較

*=Host Bus Adapter

企業情報

本企画でご協力頂いているタイアップ企業をご紹介します。

株式会社マックスサーブ
・プロフィール2004年設立。主にストレージ、ネットワーク関連商品の輸入・開発・販売を手がけ、映像・CG会社を中心にストレージの構築サービス、技術サポート等をおこなっている。Web上で機器販売の直販サイトも運営。
・コメント今回、FCP.jpのお力を借りて新しい技術のロードテストをおこなえることを非常に嬉しく思います。と同時にRAIDマニアな私自身とても楽しみです。難しくなりがちなテクノロジーを分かり易くお伝えしていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
airframe
株式会社エアフレイム
・プロフィール2001年設立。実写映像でのテレビ番組やビデオポッドキャストVP、3DCGによるアニメーションでのテレビアニメや劇 場用アニメ、そして実写、CGのコンポジットなどの映像制作。Flash、DB、webアプリケーションなどを駆使したweb開発。博物館などの公共施設 などで用いられるキオスク端末開発などなど、「モニタ」と言われるものに映るものを手がける会社。
・コメント:映像制作をパソコンで行う現場では、恒常的にストレージへの不満がたまっていきます。容量、スピード。扱いの簡便さなどなど。

今回、この斬新なRAIDシステムのロードテストに参加でき、ノンリニアでの映像編集を行うものとして、新たな可能性を試せることをとても嬉しく思います。

はじめに

 

HD制作環境のニーズにあわせ、コストの抑制と品質・効率の維持、向上を両立するソリューションとしてファイナルカットをベーストしたシステムの導入が増えているわけですが、その中で、ボードの低価格化によって(VTRを除いて)一番高価なパーツとなったのがストレージ。Xserve RAIDの登場で格段に手頃になったとはいえ、現在非圧縮のHDを扱うにはまだ絶対的な価格が高いそれなりのシステムが必要でした。しかし、SDでは浸透しつつあるDIY感覚でのHD環境の構築や運用を行えるような製品が今夏以降出揃ってきます。

そこで、今回から数ヶ月、輸入代理店の株式会社マックスサーブ社とポストプロダクションの株式会社エアフレイム社にご協力頂き、低価格RAIDストレージのロードテストのタイアップ企画をお届けします。テストするのは、PowerMac G5から内蔵HDDのインターフェースに採用されたSerial ATA (SATA)をそのまま外付け機器に使用できるように拡張されたeSATA規格用のRAIDカードと、マルチレーン接続対応のエンクロージャー。これにHDDを組み合わせた低価格のRAIDシステムが果たして現場での実用に耐えるのかを、MAXSEVE社におけるビデオ向けストレージのテストという形で、エアフレイム社でサブストレージとして実際の制作効率を検証する模様をレポート。まだ未知数のこのシステムが、果たしてどこまで実用性に耐えるのかをご紹介することで、導入の判断材料にしていただければと思います。

なお、レポートは現場の状況により不定期ですが、なるべく導入の参考にしていただけるように頻度を多くしていきます。

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