Macとの出会い回顧録(前半)
まったくの個人的な話で恐縮ですが、Steve Jobsの逝去から一夜明けたところで私(運営、松原雅人)の個人的なMacとの出会いなどなどを回顧してみたいと思います。
時代背景としては、小学校の頃はパソコンブーム、ファミコン登場で、学年あたり1クラス3〜40人x6クラス、そのなかで学年に数名PC8801やら9801、MSXなんかを持っている子がいる、そんな頃。
パソコンにはなんとなくカッコよさそげな感じで興味がありまして、X68000という黒いタワーやCD-ROMが前面に鎮座ましましているFM TOWNSなどこれまたオフィスコンピュータ(オフコン)とは一線を画すデザインの「マルチメディアパソコン」が登場し、雑誌を見たり家電量販店でさわってカタログをもらってきたりといわゆる憧れの対象として見ていたものです。
#FM TOWNSにはHabitatというチャットソフトがあり、アバターということばもこのとき初めて聞いた思い出が。とにかく使えもしないのにワクワクしてました。
もともとグラフィックデザイナーの家庭に育ったので絵を描くのは嫌いではなく(上手いとはいわない)、映像分野でCGが比較的普通に使われ始めた時代でもあり、そっち方面への興味が大きかったかも。
がしかし、プログラミングはファミコンの「ファミリーベーシック」やもらったMSXでマニュアルにある入門用のゲームをわけもわからず丸写しして結局動かず、めんどくさくてすぐ飽きちゃいました。
そんな折り、当時テレビでは「パソコンサンデー」という番組をやっており(プログラムがアナログFAXの通信音のような音で副音声として流れてくるのをデータ用のカセットテープに録音するとパソコンで動かせるという画期的なw試みをやっていたり)、その番組で3DGCのレイトレーシングのデモをやっていたのですが、3Dの球体に色や反射、光源を設定するためにデモンストレーターがカタカタカタカタコマンドを打つわけですよ。そして10分ほど待つと綺麗な反射をもった赤い球体がレンダリングされ、一同歓声みたいな。
パソコンがおもしろそうだと感じた要因としては、テレビゲームで育った世代ですから、なんとなくコンピュータがあれば紙と鉛筆はいらなくなるのかな、というグラフィック方面の興味からだったかと思います。
そこで、「絵が描きたいのにコマンドを打たなきゃいけないなんてナンセンスもいいところ。この調子だと一生縁がないだろうな」とたいそう落胆したのを覚えています。
ここまでが確か小〜中学の間の話。
高校では、いわゆる文系と理系を選ぶ際、電算室を見学して黒い画面に文字をつらつら打ち込んでいるのを見るや「文系」と即断したわけで、ともかくプログラミングやコマンド操作というのは(絵を描くとか)直接の目的でない以上無駄としか思えませんでした。
ちょうどこの頃ですかね、そんな経緯で選んだ文系生活のなかでモノ系の雑誌にMacが取り上げられ、今も交流のある学祭バンド仲間の金持ち息子がClassicを持ってて打ち込みとキーボードの一人バンドをやってたりとかで、お茶の水の楽器屋足繁くに通うある日秋葉原に寄ってT-ZONEではじめてMacを触って、何の根拠もなく「絶対これ買う」と確信しました。
だって、コマンド要らないんですよ。
マウスで絵が描ける、それはもうパソコンサンデーのレイトレと比べたら紙と鉛筆と同じで、目的が見たまま実行できるわけですから、パソコンと一生縁がないなんて挫折感は即座に180度反転しちゃいますよ。
筐体デザインもフロッグデザインですからNECやら富士通と比べるまでもなくオサレなわけで、(ソニーのトリニトロンのデザインが好きな映像関係者がMacに惹かれたのもあながち偶然ではなかったともいえそうですが、)ともかくやられました。
当時は退廃路線をうろうろしていたので大学には興味がなく、なんとなくレコーディングスタジオがいいなーという安易な落としどころで音響関係の専門学校に行ったところカリキュラムにMacが入ってまして、起動から徐々に文書を書いたりベジェで図形を描いたりする程度でしたが、これがもう楽しくて。
雑誌にはクアドラやらセントリスとかが出ていたり、初心者向けのパソコンとして「マッキントッシュパフォーマ v.s. NEC PC9821 CanBe」みたいな図式で、CanBeの98ランチとPerformaのランチャーを比較したりしてましたっけ。
もう記憶も定かではありませんが、この頃PowerPCが出てきたかと思います。
結局レコーディングスタジオは狭き門で、映像の会社でもミキサー募集してるってことでポスプロに入社。実験的に入れたというノンリニアルームにはPower Macintosh 8100で動いているMedia Composer 4000が入っていました。
会社ではMA志望は同期に取られたので、何の気なしに編集部門へ配属。
※ここから映像の世界に足を突っ込みます。
リニアの編集室では先輩エディターがなんとDOSで動く編集機に向かってキーボードを打ちながら訳のわからないボタンやレバーがずらっと並んだ机(注:BVE-9100編集機とスイッチャー)を使いこなしつつ、100本とかのテープ(入社当時はベーカムが中心)を入れ替えながら映像をつないでいきます。
#これは・・・あの電算室で見た光景がフラッシュバック・・・めげる要素満載じゃないか。。orz
入社数ヶ月したら要所要所でアシスタントに投入され、手書きのエディットシートを見ながらテープの掛け替えをしたり。でも、入社1年目でダビング業務に忙殺される中、(日々の業務に追われる編集室は都合よく空いてもおらず、忙しいエディターさんは教えを請わない限り丁寧に一から教えてくれるなんてことはありませんので)深夜や休日に空いている編集室で自習なんて気にもなれず、このままでは間違いなく戦力外通告だな〜なんてやさぐれていた頃ではありますが、一応給料なんてものももらえるようになってますから、家族会議で「Macを買おうか」って運びに。
ここでようやくマイマックです。
映像会社で働いてたので、買ったのは当時映像編集ができる低価格Macで売っていた「Performa 6420」。
320×240でキャプチャー、S端子で入出力できるAvid Cinemaというボード/ソフトを搭載したマシンで、個人的ノンリニア生活はここから始まりました。
何がしたいわけではないけど、何かできる気がする。というか、何かしたいと思わせる。
Mac OS 7.5なのである程度の完成度ではあったいい時代にはじめたと思いますが、とにかく毎日触ってましたっけ。
「Mac買いました」
っとLC575を使っていた上司に報告すると、半年もたたないうちに時々メンテナンス係に呼ばれるくらいのスキルにはなりました。
そうこうするうちに入社一年が過ぎ、結局リニア編集は覚えてないし、向いてないというか覚える気がなかったので辞表を出そうかと悩んでいると、「今度Macのテロップマシンを入れるから、担当してくれ」というお言葉が。
もうまさにMacのおかげで首の皮一枚つながった感じでした。
それから2〜3年くらいは3つの編集室を一台のPCラックに乗せたテロップマシンで渡り歩きながら、アシスタントを兼ねてテロッパーをやってましたっけ。
PCIに挿したビデオトロンのボードからケーブルでマシンルームのパッチ盤に繋いで、ダブルブッキングのときは内線でテロップ入れのタイミングを見ながらパッチ差し替え、それでも間に合わないときはIllustratorで紙焼きを作って印刷してテロップ用紙を作ってましたから、テロップ用のIllustratorのひな形と持ち込み素材用のMOに加えてプリンターも装備してありまして。(後にもう一台追加して後輩と2チェーン体制にはなりましたが。)
お客さんにはMacユーザーも多く、いろいろ質問を受けたりメンテをしたりしながら映像編集やポスプロ業務のながれ、お客さんとの接し方や業界のことなどを一通り学びました。
テロッパー後期は平行して当時出てきたビデオCDのオーサリング(ソニーのNTで動くやつ)や初の会社ホームページを独学で立ち上げたり、いわゆるマルチメディア()絡みのおしごとをさせていただきました。
いよいよDVD時代となってScenarist NTを入れたあたりからはテロッパーは後輩に引き継ぎましたが、その間自宅のMacも順調に買い換えが進み、自宅ノンリニアはキャプチャーボードと付属のPremiereに進化。
<後半に続く>
Steve Jobs氏死去
Apple創業者のひとり、スティーブ・ジョブズ前CEOが亡くなりました。
誰でも使えるコンピュータを、という着想でアップルを設立し、ビジネスをはじめたふたりのスティーブ(ジョブズ、ウォズニアック)は、方や天才的なプログラミング、方や反骨心にあふれ、人々を驚かせる悪戯心と芸術的センスを武器に、パーソナルコンピュータの父から学び、ひとりのスティーブは「アラン・ケイのパーソナルコンピュータ」の今現在の理想型としてiPad/iPhoneを残し、この世を去りました。
誰が何を先に考えた、とかそういう史実の検証は割愛しますが、あるアイディアを採用し、発展〜熟成から普及まで落とし込み、今現在多くの人が望んで手にできるまでにしたのは誰か、といえば答えは明快でしょう。
振り返れば、ジョブズ氏は“人間を中心に”テクノロジーや製品を考えてきたのだと思えてなりません。
もちろん世のため人のためといった聖人君子的な意味ではなく、結局使ってもらうためには人に歩み寄ること。コンピュータや機械のスキルがどれだけ低い層にまで目を向けて、その人たちが使えるものにするのか、という部分をじっと見据えていたように思うし、同業他社は絶対そこを軽視しているだろうとほくそ笑んでいたのではないかと。
そしてそれはデザイナーの視点ですよね。
#そう考えてFCP Xを見ると、もう創業当初に描いていたパーソナルコンピューティングデバイスが実現できるようになった今(iPhone以降)は本格的に大衆指向にシフトしている、つまり職人でなければ使えないような製品や機能はそれぞれの専門家(サードパーティー)に任せる方向なんでしょうね。
ともあれそこに行き着くまでには大きな流れがあり、それを見ると今後の方向が見えてくる気がします。
コンピュータが巨大な計算機からようやく会社の事務処理に使えるようになった頃、キーボードでコマンドを打たないと動かないコンピュータというものに対し、マウスを使い、画面を机や書類、ゴミ箱といった人間の生活に例えてコンピュータと人を結びつけるというアイディアはアップルのふたりの創業者たちにとってこれ以外にないといったものだったでしょうし、だからこそ、これを中心に据え、アップルがソフトウェア開発者向けに出した伝説の書「ヒューマンインターフェースガイドライン」という、人間のためのコンピュータのあり方・作り方を体系化したドキュメントが生まれ、いまもMac OS XやiOS用に刷新されて来たわけです。
また、自分の右腕(上級副社長)に世界屈指のデザイナーを据え、これほどまでに機能美という言葉を追求し、デザインにこだわったことも、最終的には人間のためという着地点が明確だったからではないかと思います。
根拠があり、考えられた末の各アップル製品のハードウェア・デザインはルーツを辿るとシンプルな家電製品に行き着く、というのも生活の中に自社製品がどうあるべきかをよく示しています。
また、裏を返せば“愛される製品には優れたデザインが必要”という哲学があればこそ、ソフトもハードも含めて人間がいかに心地よく使えるかという答えを“神は細部に宿る”デザインに求め、そのためにテクノロジーを活用し、おじいちゃん・おばあちゃんがワクワクするような「パーソナルコンピュータ」を作り得たのでしょう。
彼ら(コンピュータが難しいと思っている人々)のために作っているんだから、ジョブズ氏としては当然の結果、なんでしょうね。
おおよそコンピュータや機械などホスト側の都合から製品やサービス像を描くIT業界(をはじめ、あらゆる分野に通じる)にはない「人間のため」という哲学はホスピタリティーに行き着くわけで、お客をより満足させる演出に重きを置くという意味では<少し大げさにいえば>IT界におけるリッツカールトンのような存在なのかもしれませんし、ジョブズ氏がプレゼンの達人と称される所以でもあるかと思います。
そして、同じような芯を持たない模倣は、オンリーワンが存在する以上同じ土俵にあっては最終的には破れていく(というか敢えて選びたいと思うほど大衆の琴線には触れられない)のでしょうね。
#Googleは「あらゆるものを検索可能に」という明確な目的においてはオンリーワンだから受け入れられているものの、ソーシャルやスマートフォンではオンリーワンでないから苦戦を強いられる。
ともあれ、ビジネスでは様々な摩擦や波瀾万丈の歴史を作りつつも、そんなアップルを通して数々のものを残してくれたジョブズ氏に、感謝と哀悼の意を表します。
2011年10月6日
(10月7日加筆)
Compressor 4:4.0.1アップデート
Compressor4.0.1がリリースされています。
Mac App Storeからアップデートできます。
以下引用:
バージョン4.0.1の新機能
このアップデートにより、全体的な安定性とパフォーマンスが向上します。以下を含みます:
- HTTPライブストリーミングの“セルラー”設定のビットレートをアップデートします
- Final Cut Pro X内の“QuickTime書き出しコンポーネント”設定へのアクセスに関する問題を修正します
- システムが中国語で構成されているときに“このコンピュータ”クラスタが表示されない問題を解決します
- Compressor 4のインストール後にSoundtrack Proを起動するときの安定性の問題を解決します
このアップデートは、すべてのCompressor 4ユーザにお勧めします。
Motion 5:5.0.1アップデート
Motion 5.0.1がリリースされました。
Mac App Storeからアップデートできます。
以下引用:
バージョン5.0.1の新機能
このアップデートにより、全体的な安定性とパフォーマンスが向上します。今を含みます:
- デュアルディスプレイに対応します
- マルチチャンネルオーディオの読み込みと再生に関する問題を修正します
- キーフレームをマイナス時間で移動するときの安定性の問題を解決します
- “インスペクタ”を開いているときにテキストが間違って配置される問題を修正します
- 文字を調整したときに文字間のカーニングが正しく適用されるようになります
- “ドラフトモード”でタイトルに空のストリングを入力するときの安定性の問題を解決します
このアップデートは、すべてのMotion 5ユーザにお勧めします。
FCP X:10.0.1アップデート
Final Cut Pro Xの最初のアップデート(10.0.1)がリリースされました。
Final Cut Pro X Software Update
アップデートはMac App Storeからインストールできます。
以下引用:
バージョン10.0.1の新機能
このアップデートにより、全体的な安定性とパフォーマンスが向上し、以下の機能が追加されます。
- ロール機能を使用して、オーディオおよびビデオのステムを1つのマルチトラックQuickTimeムービーまたは個別のファイルとして書き出せます
- 他社製のワークフローに対応するために、XMLの読み込みと書き出しができます
- 編集者間の共同作業を向上させるために、プロジェクトやイベントをXsan上に置くことができます
- プロジェクトにカスタムの開始タイムコードを設定できます
- 接続クリップに1回の操作でトランジションを追加できます
- OS X Lionでフルスクリーン表示を有効にできます
- GPUアクセラレーションをオンにした書き出しにより、配信速度を向上できます
このアップデートは、すべてのFinal Cut Pro X ユーザにお勧めします
Mac App Store:購入ステータスの誤作動
OS X 10.6.7から追加された、FCP X/Motion 5/Compressor 4の唯一の購入窓口となっているMac App Store。
このMac App Storeで、アップデートやインストールなどのステータス(ボタンの表示)が不自然な場合に考えられるケースを書いてみます。
Mac App Storeでは、システム内の「アプリケーション」フォルダに該当するアプリケーションがインストールされているかどうか、また、そのバージョンをチェックして、未インストールなら購入やインストール、アップデート可能ならアップデートといったステータスになります。
もしインストール済みでありながら再びダウンロードしたい場合は、再ダウンロードも可能です。
しかし、入れたはずなのにまたダウンロードできるようになっていたり、逆に入れてないはずなのに「インストール済み」など、Mac App Storeのステータスがどうもおかしいといった場合は、次の原因が考えられます。
端的にいえば、マシンに複数のシステムHDDが混在していないか?ということです。
Macは旧来より複数のシステムから起動に使うものを選べ、Mac OS 9からは標準で「起動ディスク」設定から次回起動するシステムを選べるようになっています。
Mac OS Xでも起動ディスクの選択は標準になっていて、業務であれば有事(納品間際にまさかの起動不能、とか)の際の安定環境を控えておいたり、特にSnow LeopardからLionへの移行やFCP 7環境を残しつつFCP Xもさわり始めるといったシチュエーションでは、複数のシステムHDDやパーティションがマウントされている状況はそう珍しくもないかと思います。
私のマシンもLionと2つの目的別Snow Leopardのシステムが接続されていて、必要に応じて切り替えています。
しかし、このような状況では、Mac App Storeは今どのシステムから起動しているのかを正しく判断できないようです。
■Mac App Storeの誤作動
状況:次のHDDがマウントされている
・Lionのシステム=FCP X 10.0.1、Motion 5.0.1、Compressor 4.0.1
・Snow Leopardのシステム=FCP X 10、Motion 5、Compressor 4
FCP X関連を最新版にアップ済みのLionで起動してMac App Storeを開いてみると、それぞれのアプリは「アップデート」のステータスになっています。
起動中のLionシステムではこれらはすでにアップデート済みなので「インストール済み」になっていないとおかしく、この時点で誤作動です。
が、結果が気になったので試しにMotionのアップデートボタンを押してみました。
すると、特にエラー表示もなくダウンロードを開始しました。
つまり、Mac App Storeは「確かに存在するMotion 5を5.0.1にアップデートしている」わけで、案の定FCP X関連をアップデートしていないSnow Leopardのドライブ内のアプリケーションフォルダを観察していたら、こっちがアップデートされちゃいました。
■対処方法
このような場合は、ディスクユーティリティ(アプリケーション/ユーティリティ内)で不要なシステムパーティションをマウント解除するか、可能であれば物理的にHDDを外してMac App Storeを開くと正常に動作しますので、複数システムを使い分けていてどうもApp Storeが正しく動かないといった方はお試しください。
FCP X:GPU書き出しテスト
FCP X 10.0.1では書き出しの際にGPUを利用するようになったとのこと。
そこで、簡単な比較をしてみました。
・同じマシン
・同じプロジェクト
・同じ設定
で、書き出しを比較しました。
※なお、OSはFCP X 10.0=Snow Leopard 10.6.7 (64bitカーネル)、FCP X 10.0.1=LionですのでOSの差が排除し切れていないことをご了承ください。
※特に関連する設定はないようですので、10.0.1では書き出し時に常時GPUが活用されるものと思われます。
#10.0.1ではプロジェクトのアップデートが必要で、アップしたら10.0では開けなくなりますので、事前に10.0.1用にコピーしておきます。
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