FCP X:シナリオと複合クリップの考察
Final Cut Pro Xでは、タイムラインの考え方が大きく変わりました。
そして、この部分こそが「革命的なビデオ編集」の中核の部分であり、従来と異なる・戸惑う部分であり、それ故ここを理解しないと先に進まない(=理解すれば、かえって便利に感じられる、かもしれない)部分であるかと思います。
そこで、この部分の挙動を探ってみました。
FCP Xでは、積極的にクリップをグループ化していくというのが根底の思想のようです。
そして、グループ化の方法は大きく分けてふたつあるようです。
■シナリオ
まずは、一般的なノンリニアソフトでいうところの(こんな言い回しをすることになるとは…)「トラック」に相当する「シナリオ」。
これは横方向にクリップを並べていく器で、シナリオやクリップも含めて縦方向に積んでいくとレイヤーとして振る舞います。
プロジェクトを作成すると一番はじめに空のシナリオが用意されており、これが「基本シナリオ」となります。
編集開始直後はこの基本シナリオにクリップを並べていくことになりますが、たとえばインサートやスーパーインポーズなどを行うには、基本シナリオの上段に画面で手前に来るものを置くことになります。
従来ではトラックを追加してそこにクリップを置きましたが、FCP Xではまずそのままクリップを置きます。
これは「クリップが基本シナリオに接続された状態」と表現するようで、トラックベースのソフトにはない宙ぶらりんな状況です。
そして、この状態でこのクリップにできることは、尺を変えたりエフェクトをかけたりといった<このクリップ自身で完結する>ことで、トランジションをかけたりすることはできませんので、Bロールとして並べていくにしてもカット編集のみとなります。
そこで、クリップを右クリックして「シナリオを作成」します。複数のクリップがあればまとめて選んでも構いません。
シナリオはトラックと同じようにその中にクリップを並べていけますが、トラックと異なるのは横一列を占有しないことで、これによってタイムラインが格段にスッキリします。「中身の尺にあわせたトラック」というようなイメージでしょうか。
トラックとしても振る舞う「シナリオ」にはクリップを編集したりトランジションをかけたりすることができます。
ドラッグしてクリップを追加することも、
外に出すことも可能。
もちろんシナリオ自体をドラッグして位置(タイミング)を変えることもできます。
<■複合クリップに続く>
■複合クリップ
もう一つのグループ化の方法として「複合クリップ」が存在します。
これは複数のクリップやシナリオを一つのクリップとして扱うもので、一見シナリオの方がわかりやすく融通が利きそうですが、これはこれで別の役割があります
複合クリップはシナリオ内ではあくまでクリップ扱いなので、基本シナリオの中にも存在できますし、一括でエフェクトをかけることも可能。こちらは従来のネストシーケンスのような振る舞いに近いといえるでしょう。
#複合クリップはミニプロジェクトとしてプロジェクト設定を別途設定できますが、一見したところタイムラインに置いたときに設定が維持されていないようなので別途検証の余地あり
なので、たとえば編集が固まったブロックは基本シナリオの中でも複合クリップにしてしまえば不用意にいじってしまうこともなくなり、ブロックごと移動させたりといったグループ単位での編集もできます。
複合クリップを作成するには、目的のクリップを選択して「複合クリップを作成」を実行します。
複合クリップは、ダブルクリックすると展開され、内容を編集できます。
この状態はシナリオ内と同じです。
つまり、両方ともシナリオではあるものの、
タイムライン上で
・トラック的に振る舞う「シナリオ」
・クリップとして振る舞う(けど実態はシナリオである)「複合クリップ」
という二つの選択肢が用意されているというわけですね。
複合クリップの編集から抜けるには、タイムライン左上のナビゲーションにある三角ボタン(左)で階層を戻ります。
なお、複合クリップ内で尺が変わった場合、複合クリップの尺からはみ出した部分は斜線のエリア(インまたはアウト点の外)に入ります。
このような場合は複合クリップの編集を抜けて、タイムライン上で複合クリップの端を赤くなるまで伸ばします。
※中の尺が複合クリップより短くなった場合はタイムライン上で境界が黄色になるまで縮めます。
また、複合クリップを解除するには、タイムライン上で複合クリップを選択して「クリップ項目を分割」を実行します。
<■合わせ技を使うに続く>
■合わせ技を使う
では、このような場合はどうしたらよいか?
シナリオ内で、モザイクやスワップなどAとBのほかに「下地」が見えるトランジションをかけたとします。
基本シナリオに直接乗っているシナリオであれば、基本シナリオが下地に見えることになりますが、
ここでは下地を黒にする方法を考えてみます。
一番シンプルなのは、ジェネレータの「単色」→「カスタム」をシナリオのトランジションの下にドラッグする方法。
マグネティックタイムラインでシナリオが上に移動してくれますので、トランジションの下にこの黒を配置します。
しかし、このシナリオを移動させたりするには、下の黒みも一緒に動かさなければなりません。
そこで、このシナリオとジェネレータを選択して複合クリップにすると、これらをグループ単位で扱うことができます。
このように、シナリオと複合クリップはそれぞれ入れ子にできますので、場合によって積極的に使い分けていくのがFCP Xの流儀のようです。
※入れ子状態の把握に注意が必要なのはAfter EffectsやFlashなどと同じですね。
なお、内部に複数のクリップとトランジションを持った複合クリップを解除する場合、解除後に単体のクリップとなる(どこにもネストされていない状態になる)場合はトランジションが使えませんので警告が出ます。
仮にこのような複合クリップをそのままの構成で解除するには、先にシナリオに入れてから「クリップ項目を分割」するとよいでしょう。